ざさいたま
その他 奥多摩 自転車 音楽 リンク集

大衆化するクラシック音楽

クラシック音楽の普及

 そもそもクラシック音楽とはどのような音楽のジャンルを指すのだろうか。クラシック音楽という言葉は和製英語で、英語ではclassical musicの事を指す。つまり、古典的(classical)な音楽(music)という意味である。具体的にはパッハやベートーヴェン、ショパン1)の作曲した音楽の事を指す。日本では経済的な成長を見る以前この手の音楽は一般大衆とは無縁で、限られた人々にしか知られなかった。近年では教育の普及とともに、クラシック音楽も大衆とは無縁ではなくなって来ている。経済的な発展は大衆の教育水準を高め、文化の面においてもその受容層を拡大した。

曲芸としてのクラシック音楽

 クラシック音楽の大衆化は通俗化を意味する。聴衆は音楽を純粋に愉しむという層だけにとどまらず、派手なパフォーマンスや、曲芸、苦労譚を求める。期待しているのは、音楽の精神性などではなく、サーカスの感動だ。クラシック音楽を聴くことは、高級な文化に浸っているという錯覚2)や通俗的なカタルシス等の効用がある。ことに演奏家に苦労譚があれば、聴衆は欣ぶ。
 もはや音楽はどうでもいい。サーカスの感動がメロドラマでの感動となる。一連の感情移入プロセスがクラシック音楽界に与える影響は実に大きい。音楽の精神性が商業性と置き換わる。

お涙頂戴!

 2009年ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールでの椿事は記憶に新しい。日本人として初めて辻井伸行氏が優勝したのである。快挙である。新人の有望な音楽家の演奏は聴かなくてはいけない。殊に日本人となると嬉しい限りである。報道で知るやいなや早速演奏をビデオで視聴した。
 愕然とした。どうして音大生レベル以下の演奏が国際と名打っているコンクールで優勝するのか分からなかった。氏の打鍵からは音楽性は感じられず、キーボードを叩きまくっているタイピストにしか見えなかった。私はクラシック音楽が好きなだけで、全く理解できていないのかとさえ疑った。
 程なく氏のプロフィールを見て納得した。氏は全盲で、両親が苦労してピアノ教育を施し、氏も努力しコンクールで優勝することができたというストーリーである。全盲は大きいハンディキャップである。演奏することは良いとして、楽譜を読むことの困難は想像に難くない。目が見えないため聴覚が研ぎ澄まされていると普通考えるが、耳も研ぎ澄まされているとは言い難い。WSJ誌はこの件に対し正鵠な記事3)を掲載している。

大衆化の功罪

 クラシック音楽の普及は歓迎すべきことであるが、大衆化は同時に堕落を招く。需要層の拡大は量的な増量を意味し、競争活性化に繋がり質の向上にも繋がる。あくまで産業分野に認められる現象である。文化面において安易な適応は危険だ。
 今回の椿事に対してインターネット上を渉猟した。同じ日本人でも疑問を抱いている方もちらほらいるようである。勿論大多数が報道をそのまま受け取っている。それでもおかしいと言っている方は私だけではないようだ。一つの事象に対して賛同と批判があって初めて、文化ができあがる。一方的に煽動された現象は文化としてはあまりに危険であり歪である。クラシック音楽も賞賛と批判の葛藤のなかから、残すべき文化を形作るべきである。
(小宮和寛)

注:
 1)クラシック音楽を代表する作曲家。モーツアルト等偉大な作曲家は多数いるが割愛した。
 2)コンサートでは演奏家の名前を覚えているだけで、どの作曲家のどの曲を聴いたことを覚えてない場合が多い。彼らは当代一流と目されている演奏家のコンサートに行くという儀式が重要なのだ。
 3)WSJ(Wall Street Journal), June 10, 2009. What Was the Jury Thinking?, Benjamin Ivry.
記事から引用:
  but gave gold medals to Nobuyuki Tsujii, a student-level Japanese performer ... Many articles have focused on the fact that Mr. Tsujii was born blind and learns music by ear. But only results count, and his June 6 performance of Rachmaninoff's Second Piano Concerto with the mediocre Fort Worth Symphony Orchestra, led with steely resolve by James Conlon, was a disaster.
 http://online.wsj.com/article/SB124458728669699751.html参照。
  戻る
saitama web-framework (c) 2007-2012 thesaitama. All Rights Reserved.