ざさいたま
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電子書籍から再びWebへ

「もの」としての本、「メディア」としての本

 電子書籍の前提は「もの」としての本である。情報を伝えることの手段として本を利用するのではなく、「もの」としての本があり、情報はたまたま本に付随する。極論であるが、現段階の電子書籍の概念は、「もの」としての本を置き換えるための代用品という気がしてならない。電子書籍推進の陰には、そのような本末転倒な前提がある。書籍は元来情報を効率よくまとまった形で固定化し、効率的に伝達するメディアに過ぎない。「もの」として書籍があるのではなく、メディアとして「書籍」があるのである。「本1)」ありきではなく、「情報」ありきなのである。

電子書籍としてのWeb

 今後スタンダードになることが予測される、国際フォーマットePubはHTMLのサブセットを利用しており、コンテンツを一纏めにして扱えるようパッケージ2)したものである。このことからもWebと電子書籍は、実は極めて近い位置関係にあるといえる。
 Webを電子書籍の一形態としてとらえると、既に我々は電子書籍を利用していることになる。書籍といってもWebは実際の書籍とは異なり、極めて変動的で、情報の信憑性に対しても本来の書籍と比較することはできない。旧来の書籍は著者から読者に対して一方的に情報を伝える。Webは著者から読者に対して情報を伝えるが、逆に読者から著者に対して情報を伝えることもできる。Webは情報の即時性、情報の双方向性が加わった新しいタイプのメディアなのだ。
 とすると現在のフォーマットに関する議論はナンセンスいえるかもしれない。が、電子書籍のフォーマット化は、Webから情報の流動性を取り除くという効果があるのである。日々更新されて行くWebからその時間による変化を抜き取り、固定化する。流動性が取り除かれることにより、本来のWebよりまとまった情報を効率よく伝達する。その情報は書籍と同様に信頼できるのである。電子書籍のフォーマット化はその意味で、Webに欠けていた古いタイプの書籍としての面を補うことになるのだ。
 電子書籍の登場は我々に信頼できる情報がまとまった「本」の本来の意義を再認識させることになるだろう。

ビジネスモデルについて

 上記のようなことが今後起こってくると既存のビジネスモデルは崩壊してしまうのか。現段階ではまともに実用水準にある電子書籍端末は皆無であるため、既存のビジネスモデルは尚健全である。今後も全てが電子書籍になることはまずあり得ない。紙の本に代わる端末はまず現代の技術では無理だからだ。電子書籍に適したものは電子書籍で、書籍に適したものは書籍に新しいメディアが加わったまでのことなのだ。
(小宮和寛)

注:
 1)紙の本は、現段階で一番優れた、固定化された情報を伝える信頼できるメディアであることには変わりない。私は紙の書籍を否定するものではない。実際現段階では電子化されたものよりも優れていることが多い。
 2)決まった様式で圧縮したもの。
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