ざさいたま
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奇妙なコンピュータ用語

はじめに

 コンピュータ用語には、英語の借用語が多い。英語を日本語のカタカナ言葉として音写したものが、コンピュータ用語となっていることが多い。コンピュータについての概念は、主に米国で生み出されたものである。英語の音写用語が多いのは当然といえば、当然である。変化の激しい分野せいか、日本語として翻訳されて伝わることは近年では少なくなった。CPU(Central Processing Unit)の事を日本語に訳した「中央演算装置」と呼ぶことは昨今では希だ。多くの場合シーピーユーと音写して呼んでいる1)
 以上のような状況にも拘わらず、英語の意味と日本でのコンピュータ用語としての意味が乖離してしまっていることがある。2つの興味深い具体例を挙げてみたい。

「プロパティー」property

 propertyとくると普通何を連想するだろうか。propertyという語は「財産」を意味する。しかし、カタカナで「プロパティー」と表記した場合、コンピュータ用語としては「設定」を意味する。日本では「財産」という意味よりも「設定」という意味で解釈する事が寧ろ多い。コンピュータに詳しい人の中には「財産」という意味を知らない人もいるくらいだ2)。何故「財産」から「設定」になってしまうのか。
 この「プロパティー」なる語は、爆発的なヒットを出した某ソフトウェア企業3)が90年代中盤に発売した製品の日本語版の訳から一般化した。設定と訳すべき所を、そのままpropertyとカタカナ表記をしたのだ。コンピューター内のオブジェクトが「持っている」パラメーターという意味で、propertyという言葉が使われたのである。この音写の「プロパティー」が一人歩きをした。市場を席巻した製品であったため、社会への影響力は大きかった。「財産、持ち物」からやがて「設定」という意味が一般に浸透したしまった訳である。英語のpropertyは属性という意味はあるが、「設定」という意味においてはconfigureの方が適切である。今ではプロパティーというと「設定」という意味の方が通用するのである。

「デフォルト」default

 この語も某ソフトウェア企業4)のカタカナ音写により、日本での意味が変化し定着した語である。英語のdefaultは債務不履行の意味で使われることが多い。履行すべき契約が、そうならず不履行になることである。日本ではコンピュータ用語の場合、何故か「標準」という意味で使われる。「不履行」が「標準」になってしまうのは飛躍も甚だしい。「デフォルト」の音写は若者言葉では「当たり前」という意味でも使われている。
 何故defaultが「デフォルト」になったのか。ユーザーが設定を「怠った場合」に呼び出される初期値の設定という意味であった。怠った場合の初期値が、やがて「標準」という意味になったのだ。プロパティーの場合同様、日本語の「デフォルト」は「標準」の意味で、今では外来日本語として立派に市民権を得てしまったのである。

まとめ

 以上のようにコンピュータ用語には、本来の英語の意味とは違う意味が加わった外来語がある。和製英語とは違い、元々ある外国語が日本に於いて変化した、洋製和語があるのである。コンピュータに限らず外来語を使う場合は、一度その言語の本来の語義に立ち返り、意味を確かめてみるとよいかも知れない。
 また社会の変化により言葉が変わってしまう一例ともとることができ興味深いことでもある。
(小宮和寛)

注:
 1)メモリ(memory)のことを「主記憶装置」と呼ぶことは少なくなった。
 2)少なくとも私の周りでは、英語に慣れた人間でないと本来の意味は知る人間はいなかった。
 3)Micro$oft Corporation。米国のソフトウェアメーカー。その後もヒット製品を連発し急成長を遂げVistaで失敗した。
 4)同上。
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