ざさいたま
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クラウド注意報

クラウドの潮流

 コンピューティングは、集中から分散の流れで進んでいるといわれてきた。人々が共有して使う物から、個人が独占して使う物になったといわれてきた。過去においてはコンピュータが高価なものであった。コンピュータの価格は下がり、それにより集中から分散の流れを推し進めたことは事実である。しかし、この流れはいま逆転している。分散から集中あるいは偏在へと変化をしているのである。これが「クラウド」の流れである。
 クラウドコンピューティングは偏在するネットワーク通信網を利用し、遠隔地にあるデータベースと接続したサーバーを通して、利用者毎に個別なサービスを提供するという形態である。嘗てはコンピュータ毎の通信はコストが高くついた。インターネットが偏在している現代においてはこのような利用形態も可能となった。この偏在する通信網が分散から集中への逆転現象を可能にした。

クラウドは便利である

 例えば、外出する場合にデータをクラウド(インターネット上のサービス)に転送しておいて、外出先からインターネットを使いデータを取得することができる。これは、まことに便利である。USBメモリのように紛失の虞も無ければ、記憶メディアを持ち歩く必要もない。インターネット環境を利用すればいいのである。現地にパソコンがあれぱパソコンすら携帯する必要がないのである。また、クラウド上にあるサービスとしてのソフトウェアを利用すれば、利用者はコンピュータの煩わしい管理をしなくても済む。ソフトウェアは常にオンラインのサービスとして利用できるのだ。つまりデータ、ソフトウェア共に何処でも利用出来るのだ。
 利用者の視点では話はここまでである。クラウドの運営者の側からすると状況はもっと美味しい。例えば、ソフトウェアはオンライン上のサービスであるために、不都合が有ればアップデートでき問題があるソフトウェアをユーザーの同意なしに修正できる。さらに、オンライン上で処理を行う為ソフトウェアの海賊行為は事実上できなくなる。さらに、運営者に都合が悪いユーザがいれば、そのユーザに対するデータの凍結やアカウントの失効等の制裁処置を何時でも加えることができる。加えて利用者は他の利用者の動向を知るよしがない。いわば、独房にいる囚人のようなものである。運営者は全ての利用者の動向が明確にわかる。これはベンサム1)が考えたパノプティコン2)そのものである。フーコー3)の『監獄の誕生』4)における一望監視装置の話が実によく当てはまるのである。
 集まったデータ、これは個人情報にならないデータによってでも、利用者を累計論によってプロファイリングすることか可能となる。個人ということは重要でなくどのようなタイプの人間というだけで情報は十分である。個人情報は集めなくても利用者の大凡のパターンだけで十分なのである。そのようなデータからデータマイニングすることもある。マーケティングを行うには都合がいい。また、複数のサービスを通して得られたデータはさらに強力なものとなり、データがデータを生みだすことになる。データの内容から利用者の社会的思想、危険人物の累計など様々な統計を取ることができる。犯罪をおこしやすい人物や、反対思想を持つ人物を特定することが容易となり企業や国家による包囲網は盤石となるのだ。

クラウドの包囲網に注意

 今後このクラウド型のサービスは増加傾向にある。そして、クラウドとの関係は絶ちがたい。コンピュータが社会に登場したころ、人々は少なくともコンピュータの危険性、管理能力について警戒をしてきた。しかし、時代が進むと人々はコンピュータの危険性に注意を払わなくなった。携帯電話の受容はスムーズに進み、電話とインターネット機能を組み込んだ端末についても全く注意することなしに受け入れた。そして、偏在するインターネット環境により、どこでも情報が手に入る端末を希求するまでになった。
 そういう私もクラウドなサービスを利用している。クラウドを必須とするサービスがあるからだ。オンライン証券取引ではクラウドを嫌でも利用することになる。クラウドとの関係は絶ちがたい。
 そこで、利用者はこのようなサービスに依存しないような利用方法を模索すべきである。クラウド無しにして利用できる情報基盤をクラウドとは別に持つことでである。たとえクラウドを利用したとしても、必要最低限の情報しか登録しないよう注意をすべきである。偏在するインターネット環境は等しく平等である。自分だけしか利用しない完全にプライベートなインターネット経由のシステムを構築するなど、監視の目としてのクラウドシステムとの距離を意識して取るべきである。私はインターネット上のコンピュータにデータを保管しているが、私しか利用しないコンピュータのためデータマイニングなどをされる虞がない。
 クラウドサービスに大きく依存しているの利用者は、テクノロジに支配を受け入れてしまった「情報弱者」となる。情報化社会においては利用者は常に監視されているということを意識することが肝要である。
(小宮和寛)

注:
 1)Jeremy Bentham, 1748-1832.イギリスの哲学者。
 2)一望監視装置のモデル。現代の刑務所の設計がこれである。
 3)Michel Foucault, 1926-1984.フランスの哲学者。
 4)Naissance de la prison, Surveiller et punir, 1975, Michel Foucault.邦訳『監獄の誕生―監視と処罰』。
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